吉田修一さんの小説、振れ幅ひろすぎ。
ほんとに。振れ幅が広くてびっくりする。
わたしが今まで読んだことある吉田修一さんの作品は、『パレード』『悪人』『横道世之介』『パーク・ライフ』『熱帯魚』『春、バーニーズで』『最後の息子』、そしてこの『7月24日通り』あたりかと思いますが、これ全部同じ作家さんが書いているっていったいどういうことなのでしょう。吉田修一さんの中には一体、何人の人が入っていらっしゃるのですか?(問いかけ)
ダークな作品、純文学寄りな吉田修一作品も好きですが、
わたしのような、物語作品に影響受けやすすぎる人間からすると、日常的に気軽に読み返すにはちょっと勇気がいったりするのです。
ちょっと気分転換に読書を、というようなときでも軽い気持ちで手に取って読み返しやすい吉田修一作品、それが『7月24日通り』。と、わたしは思っています。
こじらせ女子の目線の描写がリアルすぎ
地味で目立たぬOL本田小百合は、港が見える自分の町をリスボンに見立てるのがひそかな愉しみ。異国気分で「7月24日通り」をバス通勤し、退屈な毎日をやり過ごしている。そんな折聞いた同窓会の知らせ、高校時代一番人気だった聡史も東京から帰ってくるらしい。昔の片思いの相手に会いに、さしたる期待もなく出かけた小百合に聡史は…。もう一度恋する勇気がわく傑作恋愛長編。
内容(「BOOK」データベースより)
なんというか一般的に、「男性作家の書く女性主人公」って、作者の「女性にはこうあってほしい」という願望が見え隠れしてしまうことがあって、なんだかなあ・・と思うことが、私はあったりなかったり、なのですが。
これはちがいますよ。
この主人公の、コンプレックスが滲み出た感じといい、卑屈な感じといい、とてもリアル。
自分の住んでいる町をリスボンに見立てて妄想しながら毎日を過ごしているんだけどそのことを誰にも言ってないとことか、自分に自信がないぶん、イケメンな弟が自慢だったりするところとか。とてもリアル。
学生時代にいわゆる「非モテ生活」を過ごしてきた、少女漫画脳の人は、主人公に100パーセント共感するかどうかは別として、「ああ、わかるなあ」と、要所要所で思うんじゃないでしょうか。
あと、高校時代にものすごく目立ってた美男美女カップルが、大人になってからは必ずしも輝いてるわけでもなくて、それぞれの岐路に立ってるところもリアルですね。
「間違ってるか間違ってないか」という基準の外にあるもの