めくるめく雑記帳

生活記録/買ってよかったもの/読書感想

読書

江國香織『冬の日、防衛庁にて』―「勝ち負け」ってそもそも何だろう

江國香織さんの初期作品をまとめた短編集「つめたいよるに」に収録されている作品「冬の日、防衛庁にて」についてです。 新潮文庫の「つめたいよるに」裏表紙に書かれた紹介文はこのようになっています。 デュークが死んだ。わたしのデュークが死んでしまっ…

村上春樹『蜂蜜パイ』―物事を「目に見える形に変える」とは?

村上春樹さんといえば長編小説のイメージが強いですが、短編もいいですねえ。 今回は、短編小説集「神の子どもたちはみな踊る」の最後に収録されている作品「蜂蜜パイ」について書きたいとおもいます。この話とても好きで定期的に読み返してしまう…… しんと…

川上弘美『離さない』―中毒性とはこういうことだ

川上弘美さんの「神様」は大好きな短編小説集で、もう何回も何回も読み返しているのですが、最近あらためて収録作品のひとつ「離さない」を読み返したら度肝を抜かれてしまいました。

江國香織『綿菓子』―理想はほどけてやがて矛盾の愛に溶ける

『綿菓子』は、江國香織さんの作品の中でも、かなり好きな中編小説です。 新潮文庫「こうばしい日々」にはふたつの中編小説二編が入っていて『綿菓子』は後半におさめられています。

村上春樹『スプートニクの恋人』―「こちら側」と「あちら側」が示すものとは?

むかし大学生のとき読んだときのわたしの感想はたしか「せつないけど美しい話」「なんか唐突な結末だなあ(どのように受け止めたら……?)」といったライトなものだったと記憶しているのだけれど、いま再読してみたら感想が全然違いました。最高でした。再読…

吉田修一『7月24日通り』―非モテ女子脳+少女漫画脳に刺さる小説

吉田修一さんの小説、振れ幅ひろすぎ。 ほんとに。振れ幅が広くてびっくりする。 わたしが今まで読んだことある吉田修一さんの作品は、『パレード』『悪人』『横道世之介』『パーク・ライフ』『熱帯魚』『春、バーニーズで』『最後の息子』、そしてこの『7月…

遠野遥『破局』―とにかくいろいろ語りたくなる作品

遠野遥さんの『破局』は、芥川賞受賞をされて話題になった当時に読んだのですが、最近また読み返してまた感想を書きたくなったので書きます。とにかく「いろいろ語りたくなる」作品なんですよねこれ。。 ※以下、私の推測を多分に含む感想なので、小説の読み…

山田詠美『放課後の音符』―価値観はいかにして形成されたかという話

自分の価値観というものについて「この価値観、どこからきてるんだろう?何の影響なんだっけ?」と思うことがある。 「これはかっこいい」「これはかっこよくない」という、漠然とした主観というものが、自分の中にいろいろあるなあ、と思う。 むかし、自分…

太宰治『女生徒』―正しく生きたいのにそうならない思春期の葛藤

高校1年の夏休み、太宰治の『女生徒』を読んだ私は度肝を抜かれた。 "えっ、ちょっと待って...??どこのページを開いても、私が普段考えていること―しかもこんなこと口に出してもしょうがないことだからそっと心の中にしまっておこうって思っていた感情ばか…

江國香織『流しのしたの骨』―家族って独特だよね

この前Twitterを見ていたら 「#名刺代わりの小説10選」というハッシュタグがあったのでやってみました。要は自分の好きな小説を10作品挙げるというものです。 これ、他の方が挙げている作品名・作家名をみていると「そうそう、その小説も気になっていたんだ…

為末大「諦める力」に思う、辞めどきの見極め方

為末大さんの「諦める力」を読みました。 // リンク 日本人は「やめる」「諦める」と言う言葉の背後に、自分の能力が足りなかったと言う負い目や後ろめたさや敗北感を強く持ちすぎるような気がする。 (為末大「諦める力~勝てないのは努力が足りないからじ…

『小さいおうち』(中島京子著)を読んで思う、人の話を聞くことのあやうさ

たとえば誰かと話をしていて、相手の話が何だか的を得ないままだらだらと続き、そもそも何で私にそんな話をしてくれるんだかその真意がさっぱりわからず、「結局あの人何が言いたかったんだろう?」と思っていて、数年後、